アダコテックはゴールドスポンサーとして2024年度人工知能学会全国大会に参加したので、現地の様子を記事にしました!
参加の経緯
昨年に続き、AIに関する最新技術の情報収集およびアカデミアの方や学生さん、他社さんとの交流のため人工知能学会全国大会に参加しました。今年はゴールドスポンサーとしてブースも展示しました。
人工知能学会とは
人工知能学会は人工知能に関する日本最大の学会で2023年度の大会では3500人以上の参加者がいました。毎年5月か6月の夏前の時期に行われます。
多くの基礎理論や応用に向けた研究とともに様々な企業内のAIを使った取り組みの紹介もあり、幅広い内容の議論が繰り広げられます。
展示内容
弊社の中心技術であるHLACの紹介とそれを使った外観検査手法を紹介しました。工場などインターネットが使えない環境でも安価なPCで素早い検査ができるように、弊社では古典的な技術を使うことで軽量な外観検査ツールを開発しています。
今回は新しくリリースしたトレーニング画像の選別ツールの紹介も行いました。学習に適した画像の選び方がわからない、間違った異常検知を抑えるために再学習をするために使う画像の選び方がわからないと行ったお困りごとにお答えできるツールとなっています。
ポスターの右下にあるようにインターンも募集しているので、興味ある方はぜひご応募ください!
展示をしてみて
学会だと検査のアルゴリズムについて尋ねられる事が多いと予想していたのですが、実際にブースにいるといろいろな企業さんなどから検査運用のお困り事をお聞きしました。人工知能学会は企業ブースも多いので幅広い参加層がいるとわかったのは学びでした。
新しい学習画像選別ツールで解決できるお困り事のご相談に乗ることもできました。お話をお聞きしたことで、我々のお困り事に対する解像度も上がり今後のプロダクト開発につながる情報を得られたのは収穫でした。
今回は研究発表を行わなかったこともあり、研究者や学生さんの訪問者が少なかったと感じます。この反省を活かして来年は研究内容も発表する予定です。実応用の中では弊社が得意とするような古典的な技術が強みになるということをもっと学生さんやアカデミアの方に知っていただきたいので、ぜひ来年度は弊社のお話を聞きに来てください!
気になった講演
参加したエンジニアたちが気になった講演を下にまとめます。
1. 工事現場映像における深度情報を活用した重機接触事故リスクの推定
概要
近年、労働災害を減少させるための取り組みによって転落・墜落といった事故は減少傾向であるが、その他の事故については変化が起きていない。特に重機接触事故は死亡に至るリスクが大きく、これを防止するための技術的対策と、将来的な事故リスクを明らかにする解析技術が期待されている。
先行研究では、入力映像の検出物体間の平面上での時空間情報にのみ注目しており、「重機と人が(実空間上では)離れていても、画像平面上だと近く見える」場合も事故リスク高として推定されてしまっていた。
そこで、映像から取得した深度情報を活用することで検出物体間の空間的な距離を考慮することが可能となった。
感想
利用可能な映像データはお客様から提供されているものであり、深度情報を直接取得するデプスカメラ等に変更できないという制約があった。それゆえに、単眼深度推定を行うモデルを採用する工夫がなされていた。
我々も同様な制約のもと異常検知モデルの研究開発を行っているが、タスク内容によって深度情報の活用も有効になると感じた。このような技術の適用可能性についての気づきが得られ、非常に興味深い内容だった。
2. 画像解釈器への進化型敵対的攻撃における離散ウェーブレット変換の活用に関する基礎検討
概要
Deep Neural Netowrk(DNN)に対する新しい敵対的攻撃手法の提案。離散ウェーブレット変換(DWT)を用いることで、画像解釈器の注視領域を誤誘導する方法を紹介している。内部情報を使用しないブラックボックス条件下で行われる。DNNは多くの分野で利用されているが、内部構造が不透明で判断根拠の信頼性に課題がある。敵対的事例はDNNに誤った判断を引き起こす脆弱性がある。実験では画像ラベルはそのままで注視領域のみを誤認識させた結果を示した。
感想
医療画像解析などの実業務に生成AIを含むDeep Neural Netowrkのようなブラックボックスなシステムを用いる場合には、説明性や未知のデータに対するロバストネスが課題になることが多い。シンプルな線形結合などでシステムを表現するのも一つではあるが、ブラックボックスなシステムでも複数の攻撃に対する耐性を示すことである程度説明性につながるのではないかと感じた。
3. 外観検査での異常検知におけるノイズを含む学習データに足するデータ選別方法
概要
既存の外観検査で発生した不良品と判定したもののうち過検出(9割以上)を機械学習を用いて救うという問題設定。また良品判定した画像は多すぎるためストレージに残すことができない。
過検出した学習を用いて良品学習のアプローチをとる場合、学習データに含まれる不良品画像の排除が課題になる。
従来手法(Soft Patch)ではモデルは得られるがクリーンなデータセットを得ることができず、利便性問題があったが、従来手法と同等精度を維持しながらクリーンなデータセットを得ることのできる手法を提案。
感想
機械学習のオペレーションを実現する上で、「学習画像のクリーン化」は非常に重要であると従前より感じていたテーマ。アダコテックでも同テーマへの取り組みを行っているがアプローチの違いが興味深かった。
課題設定が現場ならではでリアルな説得力を感じた。技術的な知見と現場課題の理解が得られた。
4. Human-Aligned Topic Model for Explanations of Image Classification
概要
近年の機械学習による画像の分類精度の向上は著しいものの、その結果解釈性において「なぜこの画像はこのクラスにに分類されたのだろう?」という疑問が残る場合が多い。そこで人がインタラクティブに分類モデルへのフィードバックを行う対照学習を組み合わせた半教師ありクラスタリング手法を提案した。結果として人の認識とのマッチ度の高い分類モデルを作ることができた。
感想
モデルの学習段階において人の意志を反映するHuman-in-the-Loopの仕組みを採用したところに興味を持った。
アプリケーションレベルではEnd-to-Endで自動最適化するよりも、「ここだけは」という人の意志をこめたいケースが多く、機械学習の社会適応における重要な課題に着目した研究である。
概要
DeNAさんでは、各AIプロジェクトで、プロジェクト進行の方法がバラバラだった。
PoCにおけるステークホルダーの期待値も曖昧で、PoCフェーズでAIエンジニアが専門ではないインターフェースの実装に着手に携わることもあった。
上記課題を解決するため、AIプロジェクト進行のフレームワークを整備し、PoCとMVP開発のフェーズを明確に分けることにした。
各フェーズで撤退基準を明確に設け、フェーズの終わりに、ステークホルダーに対して成果物をベースにレビュー会を開く体制を設けた。
感想
AIプロジェクトマネジメントにおいて、DeNAさんが感じている課題が、弊社でも同じように直面している課題だったため、非常に参考になった。
弊社のAIプロジェクトにおける課題は、弊社そのものの課題というより、不確実性の高いというAIプロジェクトの特徴そのものによるものだと、客観的に理解することができた。
今後、AIプロジェクトに慣れていないメンバーでもスムーズにオンボーディングできるような社内環境を構築するには、今回の発表にあったようなAI管理手法を導入することは有用であると感じた。
今後の活動予定
MIRU 2024にシルバースポンサーとして出展する予定ですので、参加される方はぜひおいでください!また、上にも書きましたが、来年度の人工知能学会では研究成果を発表する予定なのでぜひ来てください。
最後に、随時インターンを募集しているのでご興味がある方はぜひご応募ください!